体を覆うビニールを引き裂く 76 歳とは思えないマルコス・ヴァーリの若々しい顔と、灰色を意味するアルバム・タイトル...。一見奇妙に思えるコンセプトだが、これは混迷を極めるブラジルの社会や時代でもマルコス・ヴァーリという音楽家を捕らえることはできないという意味なのだという。昨年にリリースされ大ヒットとなったマルコス流ディスコ・ブギー作品『センプリ』に比べれば幾分静かではあるが、マルコス・ヴァーリのルーツともいえるボサノヴァ、そしてマルコスの盟友であった故レオン・ウェアとのコラボ期を思わせるメロウ・グルーヴを多数収録した本作『CINZENTO』も前作に負けず劣らずの傑作である。
収録された楽曲のほとんどは 2019 年に、しかも若い作詞家たちとともに作られた新曲ばかり。ブラジルを代表するラッパーであるエミシーダとのコラボレーションで作曲された冒頭の "Reciclo" に始まり、名曲 "Summer Samba" あたりを思わせるボサ・グルーヴ "Pelo Sim, Pelo Não"、盟友ホナウド・バストスとの楽曲をリメイクした "Posto 9"、7/8拍子のジャズボサ "Só Penso em Jazz"、先述のエミシーダがゲスト参加したタイトル曲 "Cinzento" ...。
アルベルト・コンチネンチーノ(ベース)、ヘナート・マッサ・カルモン(ドラムス)というリオを代表する名手たちによる心地よいグルーヴもあいまって、聴けば聴くほどにタイトルが意味する重々しい空気は払しょくされ、心が晴れやかになってくる。そんなユーモアあふれるタイトルとアートワークを含めて、本作はポップ・マエストロであるマルコス・ヴァーリの真骨頂を発揮した作品と言えるだろう。
https://youtu.be/ZE71KafqMpc
https://youtu.be/uSYRHG2mv38
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