幼い頃からコンサート・ピアニストとして活躍し、ストラヴィンスキーやジョン・ケージとも共演するなど、早くから才能を発揮していた才女だったジェシー。サンパウロではロシアうまれの音楽家 Joseph Kliassに、パリでは Marguerite Long に、そしてセント・ルイスでは Robert Wykes に学ぶなど、現代音楽の世界で目覚しい活躍をみせる。指揮者である Eleazar de Carvalho との結婚生活を終えると、セント・ルイス、そしてリオ・デ・ジャネイロの2箇所をおもに活動拠点とし、自身の演奏活動だけでなく4冊の著作を残し、Brazilian Academy of Music の一員として、アカデミックな世界でも多くの実績を残していった。1950年代後半以降、ボサノヴァが勃興しブラジルのポピュラー音楽が大きく変化を遂げていった流れがブラジル・ポピュラー音楽の歴史だとすれば、彼女の活動はそれと平行して行われていたブラジル・クラシック音楽の歴史ということも出来るだろう。近年ブラジルでもその功績を再評価する流れがあり、公共サービス系レーベルSESCから彼女の作品がリリースされている。
そんなジョシーの記念すべき 1ST アルバムとして知られるのが本作 『A Música Século XX De Jocy (ジョシーによる20世紀の音楽) 』だ。当時は 1958 年に誕生したボサノヴァがブラジル中を席巻していた時代だが、ジョシーはボサノヴァのルーツであるサンバを「シンプルかつオリジナルな弁証法」をもって換骨奪胎。自身の音楽を「前衛サンバ」と称し、ブラジル音楽の正史とは異なるオルタナティブな音楽的進化を本作で掲示してみせた。
本作の音楽性・批評性の高さはトン・ゼーをはじめとする後のトロピカリア・ムーヴメントにも強い影響を与えたことだろう。待望となる初のリイシューは45回転の高音質版、当時未公開の写真を追加したインナースリーヴ付きと作りも文句なしである。
https://youtu.be/Pv3A7k2Uu8I
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