
ソロギタリストの Fatou SeidiGhali と、有名なヴォーカリストの Alamnou Akrouni によって、2016年に結成され、翌年に同国北部の大都市アガデスのギターシーンで力のある Amaria Hamadalher と、リズムギタリストの Abdoulaye Madassane が加わり現在の編成になった Les Filles de Illighadad (Illighadad の娘たち)。古代から Illighadad に伝わる合唱の伝統と、砂漠のギターという2つの地域の異なるスタイルを融合。その結果、トゥアレグの民謡に画期的な方向性をもたらし、NYをはじめ世界中でライブをするようになるなど、村をこえて世界中に届く音楽となった。
とはいえ、レパートリーから演奏や歌唱方法、詩の内容に至るまで彼女たちの音楽の中心は常に Illighadad にある。サヘル地帯では遊牧民や AM ラジオ、通話アプリの WhatsApp を通じて様々な音楽が場所を超えて伝播しているものの、各村ならではの音楽の独自性はいまだ保たれ、彼女たちの音楽もまた Illighadad ならではのものと言えるだろう。
彼女たちの音楽の中心にあるのは「テンデ」と呼ばれるパーカッションと合唱である。唄、呪文、拍手が混然一体となったコーラスは、お祝いのためであったり時に病人を治療したり、またあるときは愛の歌であり、それはパフォーマーと観客の境目を次第に融解する。この音楽を聴くことは彼女たちの歌に参加することに等しいのである。本作『At Pioneer Works』が、とてもナチュラルでありながら時代や場所を超越したもののように感じるのは、まさにそういった集団主義が関連していると言えるだろう。ニューヨーカーの音楽評論家であるアマンダ・ペトルシッチは次のように書いています。「ブルックリンの観客は恍惚とし、敬虔な心持ちへと導かれました。Les Filles の音楽は魅惑的で、ほとんど祈りのようであり、聴衆をわくわくさせます。響くリズムがいずれも、人々をそのようにしていました」
https://lesfillesdeillighadad.bandcamp.com/album/at-pioneer-works