名もなき音楽家、ヴァスコンセロス・センチメントことギリェルミ・エステヴェスと FAR OUT の出会いは、レーベルオーナーのジョー・デイヴィスへのコンタクトだった。FAR OUT が先日リリースした消息不明の伝説的アーティスト、ジョゼ・マウロを見つけ出し、それをジョーに連絡してきたのが自身もジョゼに魅せられていたというヴァスコンセロスだったのである。
彼の音楽を聴くのは初めてであったが、ジョー・デイヴィスをはじめとする FAR OUT チームはその音楽性に衝撃を受ける。これまでに聞いたことのないような音楽だったが、不思議と FAR OUT のカタログになじむものだったし、彼らが影響を受けてきた音楽を新しい方法で再現したようなものだったからだ。タイトル『Furto』は英語で Theft、つまり本作は無数のサンプリングも含まれている。ヴァスコンセロスいわく、彼の創作の過程は、1つのアーティストや曲を何日も何週間も繰り返し聴く期間があるのだという。そしてそこからはスピード重視、初期衝動を録音し、出てきたものを「ぶちまける」のだ。
ブラジリアン・サイケ鬼才ペドロ・サントスの名盤『クリシュナンダ』や、かつてマドリブが行っていたイエスタデイズ・ニュー・クインテットをどこか彷彿させる、煙たくて宇宙的、それでいてジャジーで洗練されたその音楽は、まるでエルメート・パスコアールがラップトップで音楽を作っているかのよう。あまりに規格外の才能ヴァスコンセロス・センチメント、衝撃のデビュー作だ。
https://vasconcelossentimento.bandcamp.com/album/furto