
ブラジル北東部出身のアルシデス・ネヴィスはサンパウロに移住後、70年代後半より同地のアヴァンギャルド・シーンで活動。同時期にイタマール・アスンサォンらを中心とする「ヴァングアルダ・パウリスタ」ムーヴメントが勃興したため、アルシデスもその文脈でとらえる向きもあるが、実際のところは、本人も言うように、他の音楽運動にはなじまず極めてオリジナルな活動を貫いた人物である。
今回リイシューされるうちの1枚『Tempo de Fratura』('79)は、インディペンデントな姿勢を貫いたゆえに誰からも干渉されず、完全自主制作で作り上げた記念すべきデビューアルバムである。実験的な手法から素朴なフォークに至るまで、アルシデスの幅広い見識をそのまま反映。タイトルは「骨折の時」という意味で、これは末期を迎えていた当時のブラジル軍事独裁政権への強烈なアイロニーにもなっている。
今回のリイシューはブラジルのアヴァンギャルドものを続々と復刻する注目レーベルDiscos Nadaと、ジョシー・ヂ・オリヴェイラの復刻を手掛けたドイツの新興レーベルLitoralとのコラボによるもので、発売当時のプロモーション・イメージを付録したゲートフォールド・スリーヴでの再発が実現。さらにはブラジル・サイケ~アヴァンのディスクガイド『Lindo Sonho Delirante』の著者としても知られるベント・アラウージョによる新規テキスト封入と、これ以上ないリイシューとなっている。
https://litoralrecords.bandcamp.com/album/tempo-de-fratura