
ボサノヴァの巨匠、アントニオ・カルロス・ジョビンと当時ブラジルで最も人気を集めていた歌手、エリス・レジーナの奇跡的な共演盤『エリス&トム』(1974)がリリース50周年を祝して待望の復刻。ボサノヴァ特有のウィスパーボイスとは縁遠いパワフルな歌唱を特徴とするエリスと、「鉛筆よりも消しゴムが好きだ」という発言が象徴するように、ミニマルな作風を特徴とするジョビン。『エリス&トム』は、一見相反するように感じられる二人の表現が一つに溶け合った名作だ。
このアルバムを象徴する曲と言っていい冒頭の「Águas De Março(三月の雨)」は、エリスとジョビンのデュエットで歌われる。掛け合いの最中にエリスが笑い出してしまうほどにリラックスしたムードの中で録音されており、カバーの多い同曲の中でも特に人気が高い。さらに特筆すべきは、「Chovendo na Roseira(ばらに降る雨)」が収録されている点だ。ジョビンの楽曲の中でも特にクラシックからの影響が色濃いこの曲は、CTIからリリースされたジョビンのソロ作『Stone Flower』(1970)に収録されたインスト曲「Children's Game」に新たに歌詞を付けたもの。メロディーがジェットコースターのように上下するこの難曲を、エリスは巧みに歌い上げ自らのものとしている。多くのカバーが存在する人気曲だが、本作に収録されたものがベストテイクといえるだろう。
他にも、ドキュメンタリー映画のタイトルにも据えられた「Só Tinha de Ser com Você」、ボサノヴァ・クラシックといえるしっとりとしたバラード「Corcovado」、重厚なストリングスで彩られた「Retrato em Branco e Preto(白と黒のポートレート)」など、どれも名演ばかり。ラストは、ジョビンのピアノのみの質素な演奏が喪失感を引き立てる「Inútil Paisagem(無意味な風景)」で静かに幕を閉じる。ボサノヴァどころかブラジル音楽を代表する一枚といえる本作は、何としてもレコードで持っておきたい一枚かと。
https://youtube.com/playlist?list=PLrt7VbxNS8rcaHppOqrezMOWHwSmvti7t&si=dcl9NbcrdpcLvb4H
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