本作はポスト・クラシカル/アンビエント的な感覚もたたえるエチオピアの修道女ピアニスト、エマホイ・ツェゲ・マリアム・ゴブルーが1972年にプライベートプレスで残していたというレコード『Church of Kidane Mehret』からのすべての音源と、2曲の未発曲を収録した作品だ。
『Church of Kidane Mehret』は、端的にいえばエチオピア正教音楽に対する解釈をエマホイ流に追求したレコードとでも言えるだろう。エルサレム中の教会で録音し、エチオピア正教の音楽典礼に直接かかわっていたというエマホイの演奏、それも感動的なピアノだけでなく、ハーモニウムや巨大な低音のパイプオルガンで演奏するエマホイの貴重なパフォーマンスを収録している点がなによりも画期的だ。 先行公開された「Ave Maria」はレーベルのお気に入りトラックの一つで、彼女が奏でるチャイムのようなピアノが古代の石壁に反響する様を丁寧にキャプチャーしている。またエマホイのシグネチャーともいえるメロディーラインは「Spring Ode - Meskerem」においてハーモニウムで演奏され、新鮮な響きを獲得している。レコードのB面にあたる2曲で聴くことのできる、西洋クラシック音楽の鍛錬の聖歌と、生涯にわたるエチオピアの宗教音楽研究を融合したような、堂々としたオルガン演奏も実に興味深い。
そんななかでもユニークなエマホイの音楽性がもっとも顕著に表れているのが「Essay on Mahlet」だ。エマホイが正教会の典礼における自由詩をピアノにより音符ごとに解釈する極めてメディテイティブな一曲。ドラマチックなピアノ曲「The Storm」とともに1963年の自主制作盤『Der Sang Des Meeres』された曲で、当時ジャケットなしで50枚のみ制作されたというウルトラレアなレコードからリストアされたものだ。2023年3月にとりおこなわれたエマホイの葬儀の際、仲間の修道女によってゴミ箱から救出されたのだとか。
CDにはエマホイの研究家であるトーマス・フェンによるライナーノーツを含む24pのブックレットが付属する。
https://emahoytsegemariamgebru.bandcamp.com/album/church-of-kidane-mehret
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