小アンティル諸島にあるフランスの海外県マルティニーク。そこから発せられる声は、植民地主義と文化の消滅に対する世界的な挑戦において、長らく中心的な存在だった。エメ・セゼールやポーレット・ナルダルからフランツ・ファノン、そして後にエドゥアール・グリッサンやパトリック・シャモワゾーに至るまで、マルティニークの思想家たちは、ネグリチュード、汎アフリカ主義、そしてクレオール・アイデンティティといった思想を形作り、カリブ海地域と世界に波紋を広げていったのだ。
そんなポスト・コロニアリズム以降の観点で再評価が進むのが、このロランド・ブリバルの『Créole Gypsy』だ。マルティニークのトップミュージシャンたちとレコーディングを行った本作は、マルティニークの伝統リズムであるベレとカーニバル・パーカッションに、伸びやかなサックス、ローズピアノの華やかな装飾、そして物憂げなベースが融合。そのあまりに先見的な内容ゆえ、当時のレーベルにリリースを拒否され、最終的には地元の少数の聴衆に向けて極少量のみ自主盤としてリリースされたものだ。
クレオールのアイデンティティと植民地主義の不正義というテーマが、クレオール語、英語、フランス語で歌われる普遍的な愛と憧れの念と融合するその様は、ティ・ボワの力強いリズムに支えられた、ゲイリー・バーツとジョン・ルシアンへのアンティルからの回答といった趣。 もともとガイドブック『レア・グルーヴA to Z』に掲載されるなど、レアグルーヴやスピリチュアルジャズ的な観点で評価の高かった作品だが、先にも述べたような脱植民地主義的な意識の高まりにより評価が再燃していた。このタイミングでのリイシューは嬉しい限り。
https://rolandbrival.bandcamp.com/album/cr-ole-gypsy
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