1936年6月22日にブラジル北東部のアラゴアス州アラピラカ郡のラゴア・ダ・カノアという町で誕生したエルメート・パスコアルは、7 歳にしてサンフォーナ(ブラジルのアコーディオン)を手にし、兄弟とともにブラジル北東部音楽を代表するダンス音楽であるフォホーの現場で演奏を始めたのだという。森羅万象を飲み込んだかのような唯一無二の音楽性を有するエルメートの音楽だが、その源流にはフォホーのリズムが心臓のように脈打っており、それがブラジル北東部のものと意識せずも我々は自然とその音楽を聴き、体に染み込ませて来た。エルメートの創造の源であるフォホーにテーマをあてた本作『E SUA VISAO ORIGINAL DO FORRO』 は、エルメートにとって童心に帰るかのような作品であり、20世紀のブラジルが生んだ最大の鬼才であるエルメート・パスコアルを紐解く上でも実に意義深い作品であると言えるだろう。
ペルナンブーコ州の州都レシーフェで1999年に録音されたという本作の17曲は、すべてエルメートが作曲。サンフォーナをはじめ様々な楽器を演奏しまくるエルメート節は健在だが、特筆すべきはエルメートが3曲において歌詞も書いている点だろう。器楽奏者、作編曲家として知られる「音の魔術師」エルメートが、また違う側面を見せてくれる非常に貴重なテイクである。メンバーには長年エルメートを支えるブレーンであるイチベレ・ツヴァルギ、かつてエルメートやアイアート・モレイラとともにクアルテート・ノーヴォを形成していたエラルド・ド・モンチ、当時のエルメート・グループを支えたリード奏者の故ヴィニシウス・ドリンといったメンバーに加え、北東部音楽にサイケ・ロックを持ち込んだ大物歌手のアルセウ・ヴァレンサ、コメディアンとしても活躍するジョアン・クラウヂオ・モレーノ、美形女性歌手のマリーナ・エラーリといった意外なゲスト参加もあり。誰もが歌い、演奏し踊る。万人に平等な大衆音楽フォホーをエルメートが自ら指揮し体現した本作は、エルメートの創造の源であると同時にブラジル大衆音楽のピュアな魅力に溢れているとも言える。
https://youtu.be/5F4TQzJrA18
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