1985年はブラジルが20年以上にわたる軍事独裁政権から解放されたブラジル近代史の中でも最も重要な年の1つである。音楽産業においても若者が主導権を握り、ブラジル初となるロック・イン・リオ・フェスティバルが開催されるなど、世界的なビジネス・サーキットに参入した年として知られている。一方で革命的な出来事はアンダーグラウンドでも起きていた。本作『CINEMA』はそんな動きを記録したブラジル・アンダーグラウンド/エクスペリメンタルの稀少盤として知られている。
本作の主役は常に実験的・前衛的な音楽に携わっていたとされるリオ・デ・ジャネイロのミュージシャン、作曲家、詩人、作家、脚本家のホナウド・タパジョス。彼は1968年にホー&カルリーニョスの一員としてリリースしたシングル曲 "O Gigante" はレコードに録音されたブラジル最初期の「バッド・トリップ」として知られているが、そんなホナルドが妻であるテテ・サーをはじめ、アレックス・メイレリス、アナベル、エラヂオ・ペレス・ゴンザレス、そして名手パウロ・モウラといったミュージシャン達と作り上げた架空のサウンドトラック作品が本作『CINEMA』である。1983-84 年当時にブラジルで利用可能であったテクノロジーとパーカッションをはじめとする生楽器がときに反発しあいながらも共存し、太陽のような朗らかさと、アフリカ系ブラジル人によるパーカッション音楽のような躍動、そして仄暗くアンビエントで深い霧のような雰囲気が混然一体となった世界観はまさに唯一無二。とはいえ当時その音楽性が多くの人に理解されたわけではなく、完全自主でリリースされた当時のレコードは極めて稀少、またオランダ MUSIC FROM MEMORY 編纂のコンピ『OUTRO TEMPO』に本作から "Sem Teto" が収録されたこともあり、オリジナル盤は世界中のブラジルやエクスペリメンタル・ファン、さらにはバレアリック方面までを魅了するコレクター垂涎の一枚となっていた。
待望となる今回の初復刻では、なんと当時未発表という音源を2曲追加収録。オリジナルのマスターテープから丁寧にリマスター、ジャケットはオリジナルのデザインを再現したのに加え、本作に参加したミュージシャンからの証言や貴重な写真を収めた8ページのカラー・ブックレット、そしてブラジルのサイケ/エクスペリメンタル音楽のガイドブック『LINDO SONHO DELIRANTE』の監修者であるベント・アラウージョによる解説も掲載というこの上ないつくりになっている。
https://discosnada.bandcamp.com/album/cinema
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