サンパウロに位置していたホジェリオ・ドゥプラのスタジオを拠点とし、軍事政権下の網目を搔い潜るように活動していたグループ・ウン。当時のエルメート・パスコアルのバックバンドを務め、実の兄弟でもあったレロ・ナザリオ(キーボード)とゼー・エドゥアルド・ナザリオ(ドラム)に加え、セッションバンドのマンダラに参加していたゼカ・アスンソン(ベース)のトリオによって始まったこのプロジェクトは、アフロ・ブラジルの煮え立つグルーヴをジャズ・ロック~フュージョン~プログレといった最先端のサウンドと合流させることにより、ブラジルの地下シーンで一目置かれる存在となった。彼らが残した幻のデビュー・アルバム『STARTING POINT』は長らく日の目を見ることができなかったものの、数十年の時を経てレロが倉庫よりマスターテープを発掘。2年前のFar Outの導きによってようやくリリースされることとなった。
そしてこの度、『Starting Point』の2年後に録音され、未発表であったという2ndアルバム『Nineteen Seventy Seven』が半世紀の時を経て発表される。前作と大きく異なるのは、オリジナル・メンバーの3人に加え、サックス奏者のロベルト・シオンとパーカッショニストのカルリーニョス・ゴンサルヴェスが新たに加入しているという点だ。タイトな演奏によってアフロ・ブラジル~アヴァンギャルド・サンバを更新しようとしていた彼らの身体はさらに拡張、アルバム冒頭の「Absurdo Mudo」(直訳すれば「無言の不条理」)での超高速セッションを聞けばその意図するところは即座に伝わるだろう。『Slaves Mass』前夜のエルメートが惚れ込んでいた彼らのアグレッシブな側面が如実に強調されたナンバーだ。「Cortejo dos Reis Negros (Version 2)」ではマラカトゥをウェザー・リポート流のスムースなフュージョンと混成させ、「Sambapsis」ではフォホーをフリー・ジャズの俎上に乗せるなど、『Starting Point』以上に熱を孕んだ圧巻の演奏が濁流のように押し寄せる。
さらに白眉なのはキーボーディストのレロによるモジュラー・シンセの実験。スタジオに導入されたARP2600やEMS Synthi AKSを触り、怪しいサウンド・スケープを獲得した彼は「Mobile/Stabile」にて早速実践に移る。これはモジュラー・シンセとブラジル音楽を融合させたサイケデリックかつ革新的な録音として、後のブラジル・ジャズ界に大きな波紋を広げることとなる。1978年の第1回サンパウロ国際ジャズフェスティバルでバンドは「Mobile/Stabile」を初演したが、なんとその最中に主催者が突然演奏の中断を指示。言葉を介さずとも節々から漏れ出る反骨精神は保守的な体制側より反発を受け、当時のオーディエンスからは「芸術への検閲」として激しい批判が巻き起こったという。
ついにそのベールを脱ぐ幻の第二作『Nineteen Seventy Seven』。奇跡のような一枚です。
https://grupoum.bandcamp.com/album/nineteen-seventy-seven
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