シカゴのインディ・シーンで注目を集めた『IN MY DREAMS I'M THERE』を2021年に発表したシンガー・ソングライターDEVIN SHAFFERが、ニューヨークへ拠点を移しながら制作したスタジオ・アルバム。ある日、路上で「THIS IS FOR YOU」と書かれたメモ付きのMARTINのアコースティック・ギターを拾ったことをきっかけに、ベッドの上で囁くような声とギターだけで書き始めたフォーク・ソング集で、シカゴとニューヨークを行き来する生活の中で生まれたスピリチュアルな問いかけや、不確かさを受け入れる感覚が丁寧に歌われています。
レコーディングはシカゴのBIM BOM STUDIOSで行われ、THE SLAPSやTENCI、MIA JOY、TASHAを手がけるMICHAEL MACDONALDがヴォーカルとギターの録音を担当しました。その後、ピアノにはLUCY LIYOU、ドラムにはL'RAINやBARTEES STRANGEのバンドでも叩くSARAH GALDES、ハープにはLEYAのMARILU DONOVAN、ペダル・スティールにはMORE EAZEのMARI RUBIOといった精鋭が参加し、フランスのLA FRETTE STUDIOSでANTHONY CAZADEとJORDAN REYESがミックスを手がけています。VASHTI BUNYANやSIBYLLE BAIER、LINDA PERHACSを現代にアップデートしたような静かなフォーク感覚と、ONOやTHE ARK OF TEETH周辺ともつながる実験性が同居する構成です。
ブルックリンの部屋の窓辺で録音された環境音がほとんど無音に近いかたちで流れる"INTRO"から、静かなフィンガーピッキングと低い囁き声がそっと立ち上がる"FOREVER"へとつながる冒頭は、『IN MY DREAMS I'M THERE』のアンビエント寄りの作風から本作への橋渡しになっています。皮肉を帯びた歌詞と軽快なフォーク・ロックのビートが交錯する"ALL MY DREAMS ARE COMING TRUE"、3拍子の揺れにSARAH GALDESのドラムとLUCY LIYOUのピアノが絡む"ANYONE"、夜の静けさの中でギターと声だけが前に出る"NIGHT"、終盤で本作のテーマを集約する"I GUESS I'M CRAWLING"では、自分の弱さや迷いを正面から歌いながら、最終的に「音楽の喜び」に身を預ける感覚が穏やかに響きます。
フォークやシンガー・ソングライターの枠を超えて、アンビエントや実験音楽に触れてきたリスナーにも深く届く一枚です。
https://devinshaffer.bandcamp.com/album/patience
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